3 会社が倒産した場合の働債権確保

Q3-1 勤め先が倒産してしまうと、賃金や退職金は支払ってもらえないの?
賃金の支払がなされていない場合には、たとえ倒産したからといって、そのことによって当然に、労働者が賃金を受け取る権利(賃金債権)や、使用者が賃金を支払う義務(賃金債務)がなくなるというわけではありません。
 *倒産するまでの期間の賃金についての権利や義務
  →原則としてそのまま残ります。
 *倒産した後の期間の賃金についての権利や義務
  →その後の労働契約関係が継続するか否かによることになります。

勤め先が法律上の倒産手続に入った場合
 賃金を含む勤め先が負うすべての債務の弁済は、それぞれの法律に定められたそれぞれの債権の優先順位や手続に従って行われます。
 法律上の倒産手続においては、賃金等の労働債権については、一定の範囲について優先権が与えられていますが、会社等に残された財産の状況によっては、賃金の支払が遅れたり、カットされたりする可能性もあります。
 また、それぞれの法律に定められた倒産手続に拘束される債権の弁済を受けるためには、手続に従って裁判所に届け出ることが必要です。
 一方、倒産手続に拘束されない債権は、勤め先の会社等に請求すれば足りますが、それぞれの法律に基づいて財産を管理・処分する管財人等が選任されている場合には、管財人等に対して賃金債権の弁済を請求することになります。(法律上の倒産手続のうち、破産及び会社更生においては、必ず管財人が選出されることになっていますが、民事再生においては、必ずしも管財人が選出されるとは限りません。)
 
 中小企業退職金共済制度のように、労働者が、退職金の積立先である社外の機関(独立行政法人勤労者退職金共済機構)に直接支払を請求すると、その請求に基づき退職金が社外の機関から労働者に直接支払われる仕組みになっている制度もあります。
 
Q3-2 倒産処理にはどんなものがあるの?
 会社等がとりうる倒産処理の方法はいくつかあります。どの方法をとるかによって、賃金等の労働債権の優先順位も異なります。
 
主な倒産処理とその特徴は、次のとおりです。
 
任意整理
法律上の倒産手続
破産
民事再生
会社更生
清算・再建型
清算型
再建型
制度
債権者との個別交渉等で債務を減らす方法です。会社等は解散し、破産管財人が清算事務を行い、すべての財産を分配して清算する方法です。主として中小企業等を対象に、原則、それまでの経営者が事業経営を継続しながら再建を目指す方法です。主として大企業を対象に、管財人が更生会社の事業経営と財産管理処分を行いならが再建を目指す方法です。
利用状況
10,077件
(60.6%)
5,384
(32.4%)
853件
(5.1%)
48件
(0.3%)
特徴
支払の原則は民法や商法の規定によります。適用対象の限定はありません。裁判所が監督し、破産管財人を選任します。適用対象の限定はありません。裁判所等が監督します。株式会社にのみ適用されます。裁判所が監督し、管財人を選任します。
メリット裁判所等の監督がなく、スピーディーな解決が図られます。
裁判所の監督があるので公平かつ透明な手続きです。手続きに拘束される関係者の範囲を限定するので、簡易迅速です。全ての利害関係者を拘束するので抜本的な再建計画の策定が可能です。
デメリット場合によっては“早い者勝ちの回収”になる可能性もあります。手続きが終わるまでに時間がかかる場合も多いです。無担保債権者の権利のみを制約するので手続きの効力が弱いです。手続きが複雑かつ厳格なので時間と費用がかかります。
注)清算型とは、会社等を消滅させる方針で倒産処理をすることです。
再建型とは、会社等が経済的に破綻した場合に、会社等を維持していく方針で倒産処理をすることです。
「利用状況」のデータは、帝国データバンク「全国企業倒産集計(2003年報)」によります。
 
倒産処理には、他に商法の会社整理や特別清算という方法もあります。


Q3-3 それぞれの倒産処理において労働債権の扱いはどうなっているの?
 それぞれの倒産処理における労働債権をはじめとする各種債権の優先順位の概要は、次のとおりです。(上にいくほど優先順位が高くなります。)
 
任意整理
法律上の倒産手続
破産
民事再生
会社更生
法定納期限等以前から設定された抵当権等の被担保債権抵当権等の被担保債権抵当権等の被担保債権手続開始6ヵ月前以後の賃金等源泉徴収に係る所得税等の租税債権であって納期限未到来のもの会社の使用人の預り金等の一部管財人の報酬等
   〔共益債権〕
租税債権管財人の報酬等
破産手続き開始前3ヵ月間の未払い賃金等(注2)
納期限が破産手続き開始前1年よりも後の租税債権
  〔財団債権〕
賃金等(注3)








〔一般優先債権〕
管財人の報酬等
   〔共益債権〕
法定納期限後に設定された抵当権等の被担保債権
賃金等(注3)納期限が破産手続開始前1年より前の租税債権上記以外の賃金等
〔優先的破産債権〕
抵当権等の被担保債権
   〔更正担保権〕
一般の債権
(社内預金含む)
一般の債権
(社内預金含む)
   〔再生債権〕
賃金等(注3)上記以外の租税債権
〔優先的更正債権〕
 一般の債権
(社内預金含む)
   〔破産債権〕
 一般の債権
(上記以外の預かり金等含む)
    〔更正債権〕

注1)「破産」「民事再生」「会社更生」における網掛部分は、当該手続に拘束される債権であることを表します。
注2)財団債権となる賃金等は、破産手続開始前3ヶ月間に生じた給料債権及び破産手続終了前に退職した使用人の退職金のうち退職前3ヶ月間の給料の総額に相当する額
(その額が破産手続開始前3ヶ月間の給料の総額よりも少ないときは、破産手続開始前3ヶ月間の給料の総額に相当する額)です。
注3)平成16年4月1日以後は、民法において一般先取特権が付与される労働債権の種類及び範囲が、商法と同じく雇用契約に限らず広く雇用関係にある者(「使用人」)が有する給料債権の全額になりました。

Q3-4 未払賃金の立替払制度ってどんな制度?
 本来、賃金の支払は個別の事業主の責任の範囲に属するものですが、会社等が倒産した場合には、残された財産が乏しい場合も多く、実際に労働債権を回収できるとは限りません。
 そこで、労働者の救済を図るために、法律上の倒産又は中小企業の事実上の倒産の場合に、賃金を支払ってもらえなまま退職した方を対象に、国が「未払賃金の立替払制度」を実施しています。
 
立替払を受けられる条件
 勤め先が1年以上事業活動を行っていたこと。
 勤め先が倒産したこと(下記のいずれかに当てはまる場合)。
   法律上の倒産(破産、特別清算、会社整理、民事再生又は会社更生の手続に入った場合)
 この場合は、管財人等に倒産の事実等を証明してもらう必要があります。
   事実上の倒産(中小企業について、労働基準監督署長が倒産していると認定した場合)
 この場合は、労働基準監督署に認定の申請を行ってください。
 労働者がその勤め先を既に退職していること。
※退職日や申請日等について時期的な条件がありますので、ご注意ください。

立替払の対象となる未払賃金は、定期的な賃金及び退職金に限ります。
  ※賃金の支払期日について条件がありますので、ご注意ください。
立替払される額は、未払賃金の額の8割です。
ただし、退職時の年齢に応じて88〜296万円の範囲で上限があります。
・手続は、おおよそ以下の流れで行います。
倒産についての管財人等の証明又は労働基準監督署長の認定
未払賃金額についての管財人等の証明又は労働基準監督署長の確認
独立行政法人労働者健康福祉機構への立替払の請求

 必要な書類や詳しい手順については、労働基準監督署又は独立行政法人労働者健康福祉機構で案内しておりますので、詳しくはお近くの労働基準監督署又は独立行政法人労働者健康福祉機構にご相談下さい。


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